はじめに
ソフトウェア開発の生産性を測る指標は多岐にわたりますが、その中でも平均修復時間(Mean Time to Restore、MTTR)は、システム障害時の復旧速度を示す重要な指標です。
Four Keys を用いた生産性可視化や改善などの業務は、プラットフォームエンジニアが支援する領域となり得ます。この記事は、Four Keys 関連の業務を行うことになったプラットフォームエンジニアや旗振り役のエンジニアに向けて書きました。ぜひ最後までご覧ください。
平均修復時間とは
平均修復時間(MTTR)は、システム障害発生から復旧までの平均時間を示す指標です。これは、障害対応の迅速さと効果性を測るための重要なデータとなります。MTTR が短いほど、チームが迅速に問題を解決できる能力を持っていることを意味します。
平均修復時間の重要性
MTTR に着目したり改善したりすると、開発プロセスがより効率的かつ安定的になり、組織全体のパフォーマンス向上につながります。具体的には、以下のようなメリットがあります。
- 問題解決の効率評価:チームがどれだけ迅速に問題を特定し解決できるかを知ることができる。
- サービスの信頼性向上:MTTR を短縮することで、システムのダウンタイムが減少し、信頼性が向上する。
- 顧客満足度の向上:迅速な障害対応により、顧客に対するサービスの安定性が実現され、満足度が高まる。
平均修復時間を改善する方法
改善方法について考える前に以下の疑問にまず答えます。
- そもそも改善する必要があるかどうかどう判断すればいいの?
- 改善する方法の前にまずは原因の話からじゃない?
前者についてはベンチマークがあるのでこのあと紹介します。
後者についてはおっしゃる通りなのですが、原因は組織によって本当にまちまちなので記事という体裁でまとめるのが難しいという事情があります。したがって、一般的に改善できるとされている方法を具体的に掲載することで、様々な事情をもった組織それぞれにヒントとなる情報が伝えられるのではと考えました。そういった経緯でここでは改善方法を掲載します。具体例を見るだけでも「うちではこんなところに原因があるかも」と気づくこともあると思います。それを狙った構成となっています。
改善すべきかどうか判断するためのベンチマーク
それではまずベンチマークから紹介します。
レベル | MTTR の値 |
---|---|
Elite | 1.0h未満 |
High | 1.0h以上-24.0h未満 |
Medium | 24.0h以上-168.0h未満 |
Low | 168.0h以上 |
これをもとに組織で改善すべきかどうか判断しましょう。MTTR 以外も生産性を測る指標は色々ありますし、他の案件もあるでしょう。それらの中から適切に優先度を決めていきましょう。
具体的な施策
MTTR を改善するための具体的な施策としては、たとえば以下のようなものがあります。「技術者のスキルをあげる」とかは意図的に省いていて、どちらかといえば仕組みで解決する系のものを集めました。
施策 | 有効とされる理由 | 具体例 |
---|---|---|
コードの品質を高く保つ | 高品質なコードは修正しやすい | コードレビュー、静的解析ツールの活用 |
テストを明文化する | 実施したテストの情報があれば原因を絞り込める | テストコードを書く、テストケースをスプシなどでまとめる |
デプロイプロセスを自動化する | 手動と比較して、デプロイの回転数向上、デプロイミス減少 | CI/CD ツール導入 |
モニタリングとアラート機構を整備する | 障害発生を迅速に把握できる | モニタリングツールの導入、アラート機構の構築 |
障害対応プロセスを整備する | 迅速かつ効果的な対応が可能になる | 障害対応手順、バグ報告のテンプレ作成 |
バックアップとロールバック戦略を整備する | 迅速に元の状態に戻すことができる | 定期的なバックアップとロールバックプロセスの自動化 |
さいごに
MTTR については今回紹介した内容を理解することが第一歩です。Four Keys を計測して PDCA サイクルを回していく開発組織は肌感として増えてきた印象です。いきなり完璧にはいかないとは思いますが、少しずつその組織でできることをやっていくことで、着実に強い開発組織になると思います。ので頑張っていきましょう。
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